■イラスト自動生成の現在
以前はクリエイティブな分野は人工知能にはハードルが高いとか言われてましたが、最近は人工知能の進化スピードがめちゃめちゃ早くて、かなりびっくりするレベルのものが出てきていますね。
ディープラーニングで大量のイラストを学習して、萌え系のイラストを自動生成する仕組みが最初に話題になったのは確か2015年の後半だったと思います。その頃のシステムで生成した画像がこちら。
これらを見て、当時もDCGANすげー!自動でこれが作れるとは面白いことになってきた!って思っていましたが、、、、
なんと2017年現在はこんなレベルまで進化しています。
上記が #MakeGirlsMoe による自動生成なんですが、このレベルのイラストが1クリックするごとにどんどん生成されるんです。この品質で人工知能が描いたイラストだというんだから本当に進化スピードがシャレにならないですね。(このシステムの論文はこちら)
このMakeGirlsMoeですが、発表当初は「自動生成ではなく単に既存イラストをモンタージュ的に組み合わせたコラージュでは?」的な感じで疑われるほど…それだけ出来がよかったということなんでしょうけど、2年でこんだけ進化するなんて、いやもう本当にすごいなあ…。
■さらに2018年になると…
Crypkoの登場によって生成される画像のレベルが一気に跳ね上がります。(2020.10.3:追記)
AIによるイラスト自動生成の進化がここ数年でかなり…やばい。 pic.twitter.com/UmuwZCmxRg
— コノギヨシヲ@変女IT担当 (@yoshiwo_konogi) October 2, 2018
このレベルの画像がCrypkoによってどんどん生成できるわけです。
これを目の当たりにした時の衝撃といったら、それはもうかなりのものでした…
■自動着色もパワーアップ
ボタンひとつでそれとなく色ぬりしてくれるPaintsChainerが出たのはついこの間だった気がするのですが、その後話題になったStyle2Paintsもなかなかすごいです。
Style2paints(旧PaintsTransfer)
https://github.com/lllyasviel/style2paints/blob/master/README.md
実際の例を見た方が理解しやすいので『変女』の画像を使って説明しますと、このStyle2paintsは塗り前の線画とは別に、リファレンスとなるカラー画像を別途用意します。そして、そのカラー画像の塗りを参考に自動で着色してくれるという優れもののシステムです。
このUIは今となっては懐かしいStyle2paints V1のUIですね。
上段にある小さい画像がリファレンスなのですが、線画に対して髪の色や肌の色等、良い感じで着色してくれています。
(2020/10/3追記)自動着色の進化は凄まじく、V1→V4になるとここまで画質が上がってきます。
さらにStyle2paints V4.5になると、下記の色塗りレベルにまで…
最新版のV4.5を是非ダウンロードして動きを確認してみてください!(ただGPUを積んだWindowsPCがないと重くて大変です)
■これはもう
人工知能はアートのしっぽを掴んだと言ってしまって良い気がします。しかしながら重要なのはあくまで「しっぽ」を掴んだのであって、頭を押さえたというわけでありません。
ディープラーニングに限らず機械学習には基本的には大量のデータを必要とします。すなわち今回の例であれば、大量の既存イラストがあって初めて実現できるシステムなわけです。そのため作られる画像はあくまで既存のイラストベースとなるため、過去のトレンドは押さえられていますが、新しいものではありません。まだまだ新しいトレンドやアート作品は常に人間が作る必要があるということです。
ってことで、そういった諸々の意味を込めて人工知能はアートの”しっぽ”を掴んだと考えています。そして人工知能は一度掴んだしっぽを離すこともないでしょう。
さらに言えば、今後もずっと大人しくしっぽだけ掴んでるかどうかも怪しいかもしれません。…例えば萌えイラストであれば年代ごとのイラストの特徴を抽出していって、顔に対する目の大きさのなどの各種バランスなどの変化を追っていけば、5年先10年先のトレンド変化を予測したイラスト生成も可能になってくるかも??とか思ってますが、それが良い絵になるとは限らないのがアートの面白いところなので、とりあえずトレンドを予測した上でイラストを描く人工知能の登場待ちですかね。
■素晴らしいイノベーションには賞賛を
最近凄いイラスト生成AIが発表されるとイラストレーター不要論とかイラスト単価が下がる的な意見が出たりと、正直昨今の「人工知能が人間の仕事を奪う」といった人工知能脅威論は本当にどうかと思っているのですが….はっきり言って人工知能は競うものではありません。使うものです。
第一次産業革命以降、蒸気機関、電気(と機械化)、コンピュータと、これまで起きた様々なイノベーションを思い出してください。人力がメインの時代に蒸気機関やら電気による機械化やら出てきたら、そりゃ当時はきっと色々あって大騒ぎして競った人もいたでしょうけど、後世の我々はそれらと競うことになんの意味もないことはわかってるし、それどころかなくては困るものばかりです。
蒸気機関が人間の仕事を奪う、電気が人間の仕事を奪う、機械が人間の仕事を奪う。コンピュータが人間の仕事を奪う。インターネットが人間の仕事を奪う。
現状のネガティブ論は上記に人工知能を追加しただけです。過去を振り返れば過剰に恐れる必要はなくて、むしろ見たこともない変化によって20年前のインターネット黎明期のようなチャンスが増えるかもしれませんよ?ってことで人工知能に仕事を奪われないように考えるよりも、これまでのイノベーションと同じで積極的に利用しましょう!ってところで落とし所としてはどうでしょうかね。
■『変女』の試し読みを公開中です!
記事内の色塗りサンプルに使った漫画『変女』もよかったら読んでみてください。『変女』第一話公開してます!よろしくです!
■記事中のサンプル画像を変更しました
※本記事は2017年に書いたものになりますが、2020年10月に一部情報を追記すると共にサンプル画像を差し替えました。
(コノギ ヨシヲ)